ダムドファイル全部観たので私的ベスト5

というわけでu-nextでダムドファイル全話見たのでベスト5の紹介をしようかなと

ご存じない人のために説明しておくとダムドファイルは、2003年に名古屋テレビが制作した30分で1話完結の3シーズン全30話の各話によって出演者が異なるオムニバス方式で名古屋を中心にした東海地方の心霊スポットや心霊話が元となっている、ローカル色の強いホラー番組である。

 

視聴理由としては接吻、愛のまなざしを、などの弩級の傑作をものにしている万田邦敏がそのうち何話かの監督、脚本を担当していて、この人が撮るホラーなら確実にすごいだろう、という俗に言う万目*1で視聴した。

 

 

5位 24話 マフラー 四日市市

幽霊本人が語り手を務める、という変則的なゴーストストーリー。

語りそのものは穏やかな口調で、風貌も生前のそれと変わらない、殺された恨みを感じさせないものにもかかわらず実際にやっていることを箇条書きにすると怨霊そのもの、というギャップが魅力的なエピソード。

終始穏やかな進行の中オチで掘り返される死体の禍々しさは特筆すべきものがある。

 

 

4位 22話 鏡 多治見市

鏡の中にしか映らない怪異に憑きまとわれる、というそれ自体はよくあるシチュエーションを工夫された構図、ロケーションで魅せてくれるのが魅力的な1話。

また怪異のバックボーンが古代の青銅鏡に封印されていたなにか、というあたり古代ケルトの異教的なモチーフを度々取り上げるアーサーマッケンやナイジェルニール作品を想起した

3位 9話 マンション 千種区

七字幸久監督回。怪異の一つも起こっていないのに不穏な雰囲気を発散している冒頭の長回しの時点で傑作と確信した1話。

白昼堂々徘徊する怪異、メンデスのアメリカンビューティーを想起する風に翻るビニールシートのショットと、そのビニールシートがそのまま霊に変容するショット(このショットはメンデスが風にあおられるビニールシートに見出した美をそのままホラーの文脈に転用したようだ)、加減なしのゴア描写、因果応報とは無関係に駆動する容赦のない脚本、とスキのない恐怖作品だった。

 

2位 1話  テレビ局 中区

記念すべき第一話。弊ブログは今作をほん怖のような実録心霊ドラマだと思っていたのでアバンの時点でガッツリ人死にが出たことにビビった。

このエピソードの特徴としては舞台となるテレビ局の撮影が良い。テレビ局というホラーとは結び付きにくいロケ地をゴシックホラーの巨大建造物を撮るような演出で撮ってしまっている。ラースフォントリアーのキングダムが近代的で清潔な北欧の巨大病院を舞台にゴシックホラーを撮ったのと同じことをしている。

 

1位 25話 幽霊団地 西区

七字幸久監督回。ダムドファイル自体ローカル局での放送だったのであれだけれども控えめに言ってもこの回はホラーのマスターピース足りうるだけの格の作品だと思う。

冒頭、ロングショットで夕暮れ時の団地に、示し合わせたかのように一斉に光が灯るシーンからして既に不穏なのだがそれ以降の23分間、高い水準をほこる恐怖描写を一切の隙を与えず押し付けてくる。

本当にあった怖い話の傑作、霊の蠢く家をアップデートしたようなあるシーン、ビデオ版呪怨を想起させる徹底的な皆殺しすることを目的としたような脚本、交通事故という極めて映画的な題材を、最大効果を発揮するタイミングで挿入したあるシーン、ネタバレになるので詳しくは語れないが全話見るのは時間がちょっと・・・というホラーのオタクもこの回だけは最低限見たほうが良い

 

またランキングからは漏れたがエクソシスト3や悪魔の首飾りを引用したうえで十全に機能させた2話、ホラー映画における監視カメラ演出の新機軸を見出した4話、ブリキの太鼓がそうであったように、内田百閒の東京日記がそうであったように、鰻という魚の身にまとう不穏さに言及した14話、フィンチャーのセブンのラストのあれを実際にに見せてしまったような16話、などもそれぞれ興味深かった。

 

ダムドファイル全話鑑賞して、特に何が良かったかを考えると七字幸久監督を見いだせたことだろう。これだけの作品を撮れる人が埋もれているのは控えめに言っても文化的な損失もいいところなのでもっと注目されるべきだ、と思う。七字幸久の今の仕事について何か知っている人がいれば是非教えてほしい

 

 

*1:俗に言わない