本
・アシモフ作品を前期・後期の変遷を追いつつその問題提起と限界を論じた本。
作者本人はアシモフの作品は今の基準でみると出来は良くないのであまり読む必要はない、と言っているにもかかわらず読みたくなった。
・アシモフのような既に古典となっている作家の全体像を理解させてくれるような本はありがたい
・鳥羽伏見の戦いの全体像が概観できた。
・鳥羽伏見の戦いに至るまでの慶喜の戦略自体は正鵠を射たものでなおかつ幕府軍の装備の質も勝っていたのにもかかわらず軍の運用のグダグダと開戦以降の幕府側の戦略ミスの積み重ねで敗戦に向かっていくのだがこの『失敗の本質』ものっぷりが不謹慎ながら大変面白かった。
・また当時の鳥羽伏見の辺りは現在のそれと違って湿地帯だったと書かれていてそこを正確に再現された映像作品を見たいな、と思った。
SFの気恥ずかしさ トマス・M・ディッシュ
・自分の所属しているコミュニティに対し逆張り的なふるまい方をするオタクが好きなのでかなり楽しく読めた。
天狗争乱 吉村昭
・水戸藩天狗党の壊滅をドキュメンタリータッチで淡々と描いた傑作。
・びっくりするほど誰にも感情移入せず、にも拘らず利害関係が錯綜した複雑怪奇極まりない状況を整理し、書き上げている辺り吉村昭はめちゃくちゃ小説が上手い。
太古の奇想と超絶技巧 中国青銅器入門 山本堯
・殷の時代の青銅器の写真集。この時代の青銅器は饕餮を始めとした怪物をモチーフにしたものが多く怪獣図鑑を眺めるような面白さがあった。
百合小説コレクション
・アンソロジー、内容的には斜線堂有紀と南木義隆のものが良かった。
・常日頃からアンソロジーはどんな小説を集めるか、ということと同じぐらい構成が重要だと思っている身としてはこのアンソロジーは良かった。
・一作品目が今ここにある地に足についた話で徐々にリアリティラインを下げていき最後にメタフィクションも持っていく辺りどの配置にどの小説を配置すればより効果を発揮するか、ということがよく考えられていた。
映画
さがす
・佐藤二朗すげえ。冒頭ワンショットから傑作だと確信しそれが最後まで裏切られることはなかった
イニシェリン島の精霊
・実は俺この映画結構ハッピーエンドだと思ってるんだよな
・親友二人はこじれてしまった仲を(それが不毛極まりない報復の応酬だとしても)新しい関係で結びなおすところで終わっているし
・親友ふたりが再び一緒にいるために新しく約束を結びなおしているのでイニシェリン島の精霊は実質『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』1期12話花開く思いだと言えるだろう。本当か?
・ソマリアの海賊怖え、という映画でなく本当に恐ろしいのはアメリカの海軍の洗練された暴力装置っぷりのほう、という話。ボーダーラインはこれと対になる話だと思う。
ベネデッタ
・バーホーヴェンは本当に野蛮かつ過剰なものとしてのキリスト教とレズビアンが大好きなんだなぁ、と思いました。
別れる決心
・あと20分削れば文句なしに傑作
・オールドボーイで一番すごいと思ったのは長回しアクションでもなくタコを生で食うところでもなく、想像や回想が時間と空間を飛び越えて現在に接続される演出(黒幕が姉の自殺を回想するシーンとか)だったのでその演出が全編にわたり横溢していて、それがoui不穏さを醸し出している辺り本当に良かった。
・前半のフィルムノワールパート(火曜サスペンス的といってもいい)と前半で描いた話を脱構築するような後半パート、という構成も面白い。
・ソナチネといい山椒大夫といい浜辺でラストを迎える映画は傑作が多いのだがこの映画の最後に現出した風景も感嘆するしかないようなものだった。
・反面構成にがとっ散らかりすぎていてあと30分ぐらい削れよ、とも思った。
・傑作。
・これ仏教の話だと思っているんですがどうでしょうか?
・これ世界の構造の話だと思っているんですがどうでしょうか?
・泣けるとかエモではなく、この作品を一言で表すと諦観になる
・後これを読んで泣ける、としか表現できない「花束みたいな恋をした」の有村架純と菅田将暉に対してやっぱこいつら雑魚だわ、と思いました。